さっきの場所まで来ると、
どちらともなく、立ち止まり、
その場所をじっと見つめました。

そこには、とりさんの血と、羽と、
とりさんが持って来たさかなさんだけが
残っていました。

ねこさんはさかなさんを見つめました。
長いこと見つめていましたが、やがて、

スッと、その中の一匹をつかむと、
ねこさんは、ひと息に、
そのさかなさんを丸のみしてしまいました。

そしてたてつづけに、数匹のさかなさんを
飲みこんで、グイッとひなどりさんにも
一匹差し出しました。

ひなどりさんは食べたくないと思いましたが
ねこさんの、怒ったような泣いたような、
苦しいような切ないような表情を、優しさで
無理におし包もうとする顔を見ると、
とても「いや」とは言えませんでした。

ひなどりさんとねこさんは、一緒に、
とりさんが残したさかなさんを食べました。



「死をむだにしちゃいけない」



ねこさんはたったひとことそう言うと、
おいでというように、
ひなどりさんをまねいて、

ひなどりさんを優しく抱いて眠りました。