ヒワズウタ ~チヒロ~


朦朧とした意識に見た母の夢は、今はどこにもなく、


そこにあるのは、


夜のコンビニの入り口で、男の人に腕をつかまれ抱きかかえられているという現実。



銀縁のメガネをかけた端整な顔立が、すぐ近くにある。



少しだけ赤味を帯びた、

その唇は、

とても柔らかそうで、



背伸びをすれば、

私の唇に、すぐ触れそうだった。