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「まさか雛乃が男をつくっているとは……」
帰路についた祖父、徳之は深いため息をついた。
幼い頃から可愛がってきた孫が、まさか“悪い虫”につかれているなんて。
徳之はもう一度ため息を吐き、がっくりと肩を落とした。
「……帰ったぞ」
「あ、おじさんです!」
玄関には見慣れない靴がある。
普段なら疲れも吹き飛ばしてくれる孫の声も、今は足を重くさせるものでしかない。
「おじさん、お帰りなさい」
玄関まで迎えに来た雛乃は、いつも妻の茜がするように鞄を持ってくれた。
あぁ、雛乃に限って男など……!
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