風のおとしもの。



     ***


「まさか雛乃が男をつくっているとは……」


帰路についた祖父、徳之は深いため息をついた。
幼い頃から可愛がってきた孫が、まさか“悪い虫”につかれているなんて。
徳之はもう一度ため息を吐き、がっくりと肩を落とした。


「……帰ったぞ」

「あ、おじさんです!」


玄関には見慣れない靴がある。
普段なら疲れも吹き飛ばしてくれる孫の声も、今は足を重くさせるものでしかない。


「おじさん、お帰りなさい」


玄関まで迎えに来た雛乃は、いつも妻の茜がするように鞄を持ってくれた。
あぁ、雛乃に限って男など……!