ない。確かにここで食べたのに。
中庭にやってくると、お昼にパンくずをあげた鳥たちが集まってきた。
「ごめんね、もうご飯はないの」
しゃがみこんで調べても見当たらなかった。
「もうそろそろ先生が来ちゃう時間だなぁ……」
「よう」
「!」
バサバサと周りにいた鳥たちが飛び立つ。
声をかけられたのに驚いたつもりはなかったけれど、村井君は不機嫌そうに立っていた。
「ごめんなさい、鳥が飛び立つのに驚いて……」
「別に、何も言ってねぇだろ」
「いえ、不愉快にさせてしまったみたいなので…」
軽く頭を下げると、村井君はめんどくさそうに何か突き出す。
「忘れてっただろ」
あ……これ、私の!
それは間違いなく、ミルク色のハンカチに包んだ私のお弁当箱。
意外な人に探し物を手渡されたからか、しばらく呆然としてしまった。
「何、いらねぇの?」
「あっ……ありがとうございます」
また不機嫌そうに言う村井君に頭を下げる。
