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村井君のおかげで森下先生の授業に間に合った。
今日はちょっといい一日だったかもしれない。
そう思っていたんだけど……。



「あれ?」

「……雛乃、どうかした?」


隣りの席の高見さんが心配してくれる。
席替えがあってからは何かと親切にしてくれて、とても明るい人だ。


「いえ、あの……お弁当箱が見つからなくて」

「心当たりないの?」

「中庭に忘れてきたみたいです」

「まだホームルームまで時間あるし、気になるなら取りに行ったら?遅れちゃったら先生に言っておくからさ」


なんて優しい人なんだろう!
でも遅れるのはよくないよね……。


「それでは、ちょっと見てきます。高見さん、ありがとうございます!」


私は教室を飛び出し、中庭へ急いだ。





「……佳代でいいって言ったのにな」