教室を出た私は、大きな木の生えた庭にきた。
いつも昼食はここで食べている。


「いただきます」


ただ、一人というわけじゃない。
いつも小さな鳥たちがやってくる。


「今日はいつもより多いねぇ。みんなお腹すいてた?」


持ってきた食パンをつつく姿が愛らしくて、思わず笑顔になる。
自分の弁当もひろげ、一緒になって食べる。
そうするだけで寂しさはなくなった。


それに、最近は珍しい人も見かけるようになった。
いつも中庭で眠っている。

――村井 鷹文(むらい たかふみ)

一年生の時から問題があった生徒らしく、学校ではちょっとした有名人みたい。
今は三年生になっても最低限の授業にしか出席せず、授業中も眠っているらしいとか。
同じクラスだけど私より後ろの席に座っていて、あまり注目したことがない。だから詳しいことはよくわかってない。



……でもこんな気持ちいい日は、眠たくなってしまうのもわかる。
最近は暖かい風が吹くようになって、すっかり春になった。
みんな仲のいい友達と、最後の一年、良い思い出をつくろうと学校生活を送り始めている。