普段ならこんなふうに他人に構うことはしない。
でもこいつには“借り”があった。

言葉だけでは足りないくらいの感謝と、尊敬。

一生かかってでも探し出して礼をするつもりだったが、まさかこの学校で出会えるとは思わなかった。
サボっていたせいでよくわからないが、いつの間にかこいつは同じクラスにいた。
転校してきたのだろうか?
それにしては時期がおかしい。
まぁ、どうでもいいことだけど。



とりあえず真面目そうなやつだし、起こしてやるとするか。
こんなちゃっちい礼の仕方をするつもりもないが、見過ごすのも忍びない。


軽く揺すると肩下まで伸びた黒髪が、さらさらと流れた。
睫毛の長い目がうっすらと開く。
こんなに近い距離で小鳥遊を見たのは初めてだ。




「んー……」




案外綺麗な顔してるんだな。
陰気そうな雰囲気から、勝手に根暗な女だと思っていた。