「てゆーか、アタシはあなたが誰だったか思い出せないのがねぇ……」


もうここまで来てるのよ!と宮崎先生は首の辺りを示し、うんうんと唸っている。
体調はだいぶ回復したからいいけど、宮崎が先生話続けるので横になることが憚られた。


「あの、私の母が画家だったので、もしかしたらそれかもしれません」

「っそう、それよ!」


手を叩いて目を輝かせる宮崎先生は、まるで子供のようだ。
本当に表情がくるくる変わる人で、面白い。
一緒にいる私まで元気をもらえるみたい。


「あなた、小鳥遊さんよね。あーすっきりした!」

「……母のこと、知ってるんですね」

「だって、結構有名だったじゃない。私個展に行ったこともあるのよ」


自慢げに話す先生は、なんだか可愛くて頬が緩んだ。
それに、私はちょっと嬉しくなった。
早くして亡くなったお母さんのことを知っている人が、まだこの世にいるんだと実感できたから。