「何もかも嫌になって、母さんのこともどうでもよくなりかけてた時、根暗そうな女がいてさ」
胸の中で小さく返事が返ってくる。
…落ち着いてきたみたいだな。
いつからかお前が弱くて泣き虫で、女だってこと、忘れてた。
ごめんな。
「そいつがさ、助けてくれたんだ。母さんのことも、俺のことも」
「それが、雛乃……なの?」
「あぁ。大したことじゃなかったんだけどな、俺がもう母さんには付き合いきれないと思った時、あいつが代わりに母さんの世話してくれて……」
ぐずっと鼻を啜る音が聞こえて、佳代が離れる。
……ひっでぇ顔だな。
肌も目も真っ赤じゃねぇか。
見かねてポケットからハンカチを出す。
佳代に渡してやると迷ったみたいだが受けとって目を押さえた。
