風のおとしもの。




ただ、母さんはそうじゃなかった。


半狂乱で、毎日少しずつ壊れていった。
生活は不規則になり、ヒステリックになる。
元々酒好きな人だったが、浴びるように飲み始めた。
俺たちの制止も聞かず、果ては膵臓癌。

精神も病んでいて、入院してからは更におかしくなっていく。
その姿を見て思い知る。

俺はこの人の為に勉強していたんだと。
いい点数を取って、褒められて、自分の限界に挑戦する。
嫌なことじゃなかったが、この全ては母さんの指示があったからなんだ。

母さんが病に臥してからは勉強に対する情熱もなくなり、堕落していった。
同時に母さんを憎むようになり、父さんに言われて見舞いには行くものの、会う度嫌気がさした。


「………小鳥遊なんだ」


震える背中を撫でる。
小鳥遊に触れた時も感じたが、佳代も細っこくて、なのに柔らかい。
昔から憎まれ口ばっかで、全然意識したことがなかったから気付かなかった。

こいつも女なんだな。
弱くて、脆くて、儚い。