「………佳代」
「っ!?」
それに対し、事もなげに返す村井君。
佳代さんは予想していなかったみたいで怯んだ。
頬に赤みがさしてみえる。
「ほら、行くぞ」
「わっ……」
その隙に村井君は佳代さんの腕を引き、廊下へと向かっていく。
佳代さんは文句を叫んでいたけど、村井君は気にせず腕を引いていき、扉が閉まって二人が見えなくなる。
一連のやり取りを見ていて、私と里香さんは何も言えなかった。
「………あのさぁ、何があったの?」
ゆっくり近付いてきた美紀さんに声を掛けられるまで呆けていたみたい。
はっとする。
「……村井、どういうつもりなんだ…?」
ぽつりと呟く里香さん。
私だってわからない。
ただ二人を見ていて思った。
嫌だって。
胸がチクチクして、苦しい。
仲良しなのは良いことなのに………。
村井君に連れていかれる佳代さんが、羨ましかった。