風のおとしもの。




森下先生の静止を振り切って廊下に出ると、ドアを一歩跨いだだけなのに、とても静かになる。


「……歩けねぇなら支えてやるから、俺の腕につかまれ」

「へ?」

「へ、じゃねぇよ。このままじゃ他の教師に見つかった時、俺が疑われるだろ」

「あ……」


確かにこれではどこかに連行されるみたいだ。
村井君の言うことを理解し、こくりと頷く。


「……じゃ、手ェ離すぞ」


乱暴な口ぶりとは対照的に、ゆっくりと手を離してくれる。
村井君の右腕に掴まるとゆっくり歩き出した。


「そういやぁ、保健室ってどっちだ?」

「えと、1階です」

「マジかよ、めんどくせぇ……」

「……ごめんなさい」


申し訳なくなって俯く。
その様子に村井君はため息のような声をもらし、後ろ頭をかいた。