怖かったのもある。
でも一番に頭を支配したのは、佳代さんだった。
私、村井君と話して良いの?
宮崎先生に教わって、わかったんだ。
佳代さんは村井君のことが好きなんだ。
好きで、すごく好きで、独占欲があるんだ。
邪魔したくない。
何より佳代さんを傷付けたくない。
佳代さん、辛そうにしてた。
あの表情の理由が今ならわかる。
「……お前、高見となんかあったろ?」
「そっ……れは…」
「なんで隠すんだよ、つか隠すならもっと上手くやれよ」
「あの、村井く―――」
「なぁ………どうなんだよ…?」
戸惑っていると、苦しそうな声が響く。
熱のこもった視線。
きりきりと吊り上がった目が、ゆっくり近づいて来る。
私もその分だけ後ずさるけど、壁際に追いやられてしまう。
逃げようと思えば逃げられる。
前みたいに両手で逃げ道を塞がれてるわけじゃない。
……でも、村井君が…。