「っぁ」


その人は私の気配に気付くと、乱暴に靴箱を開けて靴を履きかえる。


「………っ村井君!」


さっと背を向けたけど、すぐにわかった。
下駄箱がめちゃくちゃになってる…。
これ、村井君がやったの……?


「…たかな、し……?」


村井君は驚いたように振り返った。


「もしかしてこれ、村井君がしたんですか?」


さっき聞こえた音、これだったのかもしれない。
でもホントに?
村井君がやったんだとしたら、なんで―――


「…………そうだよ、文句あるか」

「ダメじゃないですか!こんな………」

「…っせぇな……」


吐き捨てるような、低い声。
いつになく凶悪な村井君に驚く。
殴られそうになった時だってこんな顔したことない。



蛇に睨まれた蛙のように縮こまり、言いかけた言葉が喉元でひっかかる。