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「………よぉ」

「こんにちは」



小鳥遊の受ける講習が終わる30分前から屋上で待機していた。
近付きはするものの、小鳥遊は妙に遠くで立ち止まる。

………警戒してるんだろうな。
ちくちくとした視線が刺さる。

…構わない。
立場上俺が弱いわけだし。
まぁ、あんなちょっとしたことでこんなにキレさせちまうとは思わなかったが……。



「あのさ、俺……その、誤解を解きたいんだけど………いや、違うな……」



言い淀んでいると、小鳥遊は凛とした声で話し始める。


「いいんです」

「………ぇっ」

「だから、もういいです」


呆気にとられて、言葉の意味を反芻する。
いいって、何が……。
背筋がヒヤリとしたが、ぐっと堪える。
無理に小鳥遊を捕まえたとして、また怯えさせてしまうのは目に見えている。