「すみません、ちょっと考え事を……」

「へぇ~、雛ちゃんでも考え事とかするんだぁ♪」

「……雛乃は数学得意じゃないし、聞く気もないなら先帰っていいよ?」

「あの、そ………」


佳代さんは優しい口調で、いつも笑顔だ。
でもわかる。
いつも目が笑ってないこと。

きっと私は帰った方がいい。
普段空気が読めないって馬鹿にされてばかりだったけど、今のはわかる。


「………そう、ですね。私はお役に立てそうもないので、今日は失礼します」

「ばいばーい☆」

「文系の科目の時はよろしく頼むよ。それじゃ」


荷物をまとめ、軽く会釈する。
嬉しそうに手を振る美紀さんと、笑顔で言う佳代さん。


なんでこうなったんだろう?
……ううん、最初からこうなる運命だったんだ。

だって佳代さんは初めから私を見ていなかったんだから。