「私は君を利用する為に声を掛けた。最低だろ?」

「そんな、私はっ―――」
「こんな最低なやつでも、一緒につるむ相手がいなくなるよりはマシって?」

「そんなことじゃなくて……」

「じゃあいいじゃん。それに私はもう、君に優しく出来ないよ?」

「あのっ…」

「……友達ごっこは終わり」



そう言うと、佳代さんは私から離れてゆっくり立ち上がった。

見上げれば、ひどく歪んだ佳代さんの顔があった。
私もひどい顔していたと思う。

しばらく見つめ合い、佳代さんの目がすっと細くなる。
すごく冷たい視線。



「じゃあね」

「あっ…!」



すたすたと歩いていく佳代さん。
追いかけようとしても体に力が入らない。立てない。

段々と佳代さんの背中が遠くなって、姿が見えなくなる。
がたんと昇降口が閉まる音がして、虚しい空気が立ち込める。


しばらくして村井君が昇降口の上から降りてきた。
佳代さんが小声で話していたので途中からの会話の内容はわからなかったみたいだ。
ただ村井君に何を問われても、今は答える気になれない。



肩と腕に残る鈍い痛みだけが、これは現実なんだと叫んでいるようだった。