風のおとしもの。




      ***




「よって、このグラフが求まり―――」



今度は村井君を追いかけることはできなかった。
なんだか気が抜けてしまい、数学の森下先生の授業にも身が入らない。
私は間違っていたのかな。
村井君は怒ったでも呆れたでもなく、ただ私を笑った。
その態度に、昔のことを思い出す。





私のお母さんは少し変わった人で、周りの大人たちにも一線引かれる存在だった。
その遺伝なのかはわからないけど、私もよく変わったヤツだとからかわれていた。
でもそんなお母さんが大好きだったし、お母さんも忙しい中、よく構ってくれたから平気だった。
優しくて、あったかくて、大好き。

さっきの村井君は、お母さんの周りにいた大人たちや、私をからかった同級生を思い出させた。
その頃の私にはお母さんがいてくれたし、庇ってくれる友達もいた。
だから多少のことは全然気にならなかった。