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「あの、村井君……」
昼休みに中庭へ行くと、いつもの芝生に寝そべる村井君を見つけた。
何か話すことがあったわけではない。
でも話しかけなければいけない気がする。
声をかけると、相変わらず不機嫌そうな顔で返される。
「昨日は、あの、ありがとうございました」
「あ?」
「その、庇って頂いて……」
そこまで言うと、村井君は探るような目で見られる。
悪い人じゃないことはわかってる。
ただ学校では悪い噂の絶えない人だからか、そんな目で見られると緊張してしまう。
「あ、あの。私、昨日帰ってから考えたんです。なんで村井君があんなことしたのかなって」
「それで、私がホームルームに出ないであんなところにいたのを、先生に怒られないように気を遣ってくれたのかなって」
一呼吸おきながら話していく。
私のことを、もう嫌ってしまっているかもしれない。
でもせっかく気を遣ってくれたのに、一緒に謝ろうだなんて言ってしまったし。
だから、もしそうなら謝りたかった。
「―――あんた、すげぇな」
「え?」
村井君は上体だけ起こし、のんびりと大きなあくびをした。
