風のおとしもの。








村井君に連れられてやってきたのは、学校の屋上だった。
初めて来たのでちょっと興奮ですっ。
風かちょっとだけきつめで、でも気持ち良いい。


「ここ、俺特等の場所なんだ」

「そうなんですか?」

「俺がよくここに来るから、他のやつらが怖がって近寄らねぇの」

「なんと………」


意地悪く笑う村井君の髪が、ふわふわと揺れた。
見た目より柔らかい髪質みたい。
ちょっと長めの村井君の黒髪。
不良生徒なのに髪は黒だなんて、なんか不思議。

………なんて、偏見だよね。



「よくここでサボる」

「それは由々しき事態です」

「ゆゆっ………お前なぁ」


堪えるようにして笑う村井君は、ちょっと新鮮だ。
やっぱり怖い人じゃないんだなぁ。


「今日はどうされたんですか?」

「あぁ、それなんだけど………」


村井君に促されてフェンスの傍まで来る。
隣りの村井君は遠くを見つめながら、言葉を選ぶように話し始める。