「君はさ、村井が怖くないの?」
「初めは少し怖かったです。でも、怖い人ではないと思うんです」
「……へぇ」
それを聞いた高見さんは、驚いたような顔をした。
高見さんも村井君のことが怖いのかな。
乱暴な人なのかもしれないけど、噂で聞くほど怖い人じゃないと思うのに。
「私、昨日考えたんですけど、村井君は私を庇ってくれたんじゃないかと思うんです。悪ぶっているようですけど、とてもいい人ですから」
「庇うって……胸倉掴まれてたように見えたけど?」
「それは、私が先生に怒られないようにしてくれたんだと思うんです」
私はいたって真面目だったのに、高見さんは笑い声を漏らす。
わっ、私、おかしなこと言ったかな。
ちょっと恥ずかしい……。
俯いていると高見さんも靴を履き替え終わり、一緒に教室に向かった。
「意外に前向きなんだね」
「そう、ですか?」
訝しんで尋ねると、頷いて返される。
「あの、私、間違っているでしょうか。それしか思い浮かばなかったんです」
「……雛乃ってさ、村井と知り合いなの?」
「いえ、お昼にたまに会うくらいです」
「へぇ、やっぱりあいつ中庭にいるんだ」
首を傾げる私には答えず、高見さんは教室に入った。
