倫子の場合

その日は少し悩み疲れて眠れなかった。翌朝寝ていない目をこすりながら倫子は家を出た。途中啓太にあってしまった。「おはよう」「おはよう」「昨日は部活で疲れた」「そっか昨日は由美と一緒だったんだ」倫子はあえて由行の存在は否定して口に出さなかった。これが倫子が初めてした隠し事だった。とぼとぼと学校までの道を歩いて行った。道すがら啓太に日頃の不満をぶつけてしまった。少し喧嘩になった、軽い口喧嘩だった。