「早く帰ろうよ」「うん」倫子の手を引いて小走りに走り出した。今来た道がなんだか疲れのせいで険しく見える、「寒いな」さっきまでの太陽は陰りをみせ雨音が近づいて来た。「走ろう」濡れちゃうから。なんかこちらに来てから天候が不調で晴れたり曇ったりしていた。「ずっとこんなだな」倫子は少し悔しそうにうなずいた。「北海道の夏は天気が崩れやすいんだ。特に山岳地帯は」じいちゃんの家がようやく見えてきた。「さあ急ごう」見えてきた煙突のある赤い屋根。外にじいちゃんが風呂の薪を割っていた。「帰ったか」啓太は懐かしそうにまとわりついた。「今日はどうだった」「今日は倫子はポニーに乗ったよ」「そうかそうか」じいちゃんはめを細めて話を楽しみに聞いていた。「途中雨が降ってね」「うん」「大変だったけど」「そうかそうか」「そりゃ大変だったの」「大急ぎで倫子と帰って来た」「疲れたろう」「うん」「早く帰ってきたな」じいちゃんはとんとんと二階にあがって小さな箱を持ってきた」「これは死んだばあちゃんと取った写真だ」「わしはもう20歳から北海道から出た事がないんじゃが」「みんな北海道じゃ」「これがおばあちゃん?」「そうじゃ」「小さい人だったんですね」「ちいさかかったが気の強い女でな」

