俺は今朝、猫を見た。
 西に傾いた、暑い太陽を背に歩く人々の間をすり抜けていく。その顔はツンとすましていて、尻尾をピンと立てて、キレイに歩いていた。
 猫はどれを見てもプライドが高そうで、それでいて人懐っこい。
 俺はそんな猫が好きだ。
 夕璃はまさに猫だ。
 さっきまで笑っていたかと思ったらちょっとしたことで怒る。そっぽを向いてどっか行ってしまう。
 たとえ側にいても、手を離せばどこかへ行ってしまう。
 猫は最後まで自由だった。