「痛いって!もっと優しくしろよ!」
「うるさいな!なら自分でやれよ」
 祐輔の声が静かな保健室に響く。
「だいたい、あんなボールも避けられないなんて」
「うるさいな。ちょっとボーっとしてただけじゃん」
 俺は絶対わざとだと思う。
 体育でドッヂボールをやっていた。元々好きではない競技なので、隅の方でボーっとしていたら、いきなり俺の名前を呼ぶのと同時に顔面にボールが飛んできた。
「宏樹、優希をいじめちゃ駄目じゃん」
「司、あんまりそういうこと言わないで」 といいつつも、司の天然はどうしようもない。
 その時、後ろにあったベッドのカーテンがガラガラと勢い良く開いた。
「あっ……」
 四人で固まってしまった。
 開けたのは猫だった。
 ―あ……れ……?
 猫の視線が何かおかしかった。
 俺だけを睨んでるような……。
 そんな事を考えているうちに、猫は保健室を出て行った。
「愛猫には懐かれてないらしいな」
「……あいねこって何」
「愛犬の猫バージョン」
「……」
 つまり、嫌われてるかもしれない、ということだ。