◆智喜Side◆
俺は、早く天川に会いたくて全速力で走った。
天川には彼氏がいる。
だから、自然にふりまわなければいけない。
まず、天川の歩いている逆方向に一階に降りる。
それで、降りた階段の反対側から上って、あたかも偶然のように後ろから声をかける。
とても、自然。
俺はこれを繰り返しているため、体力がついた、と言っても過言ではない。
「まず一階に降りて…」
「あっ、あいつまた走ってるし」
「なんでなん」
俺が毎日走りまわっているのは有名らしい。
「二階に上がって。あっ、居た居た!」
楽しそうに同じクラスの松永と話している天川。
横顔も超かわいい。
「ぜぇぜぇ…天川、おはよう」
俺よ、天川が振り向くぞ。
心臓の鼓動が早くなる。
「おはよ!灘はいつ見ても毎日息切れしてるよね」
振り向いた瞬間の髪のなびき、超ヤバいし…
めっちゃサラサラしてる。

