「じゃ、俺となりの部屋だから行くから。」
そう言って翼唆は言ってしまった。
どーすればいいの!?
「撫子ちゃんね。話は聞いてるわ。」
30歳前後の人かな?
茶髪でセミロングの髪を巻いてサイドで縛ってある、すごく綺麗な女の人だ。
「ここのイスに座って。メイクするわよ。」
「あの、メイクって自分でやるものじゃないんですか?」
「普通はそうなんだけど・・・新人のコはできないコが多いから始めのうちはやってあげることにしてるのよ。」
ここに座れ、とトントン椅子をたたいている。
すごくたくさんあるメイク道具を前にし、ちょっと戸惑う。
「はい、じゃ、始めるわよ。」
この人もやっぱりメイクはうまい。
だけど、違うんだ。
目を閉じてても感じる、あの大きくて
細い手とは違う。
2回しか翼唆にメイクしてもらった
ことはないけど・・・
翼唆はもっと優しい手つきだった。
この人が強いわけじゃない。
とても大事なもののように翼唆が
柔らかくあたしを包み込むんだ。
