フォトグラフ





シャッター音さえ聞こえていなかった俺はかなり皐月に夢中だったみたいだ。



『勇人』ならそうだろう。隣にいる『皐月』を意識せずにはいられない。



そういうことだったんだ。



「じゃあもう一回撮るよ。」



皐月と横にならんだ。



心の中で、
隣に皐月がいる嬉しさを感じながら、


それを隠すためにムッとした表情で。



きっと皐月ははにかんで、恥ずかしがりながら、俺を気にしてるんだろう。



そう思ったら、
皐月の顔が見たくなった。


さっきは全く気にしてなかったのに…。


チラっと隣を見たら、同じ事を考えていたようで、皐月とパッチリ目があった。



お互いにビックリして、パッと目をそらしたけど、


もっかい気になって見てみたら、また目があった。



おかしくて、二人で悪戯が失敗した時のような、はにかんだ笑顔になった。



これが勇人と皐月なんだ。



「は~い、終わりー!!良かったよ~!

自然だったね。」


俺には白田さんの最上級の誉め言葉に聞こえた。


嬉しくて、ありがとうございますっ!と満面の笑みで言ったけれど、


まだ始まったばかりだ。