「まずは、セットの前に二人で並んで立って。

もう君達は『勇人』と『皐月』だ。

それを意識して。」


言われた通りに並ぶ。

うぅ緊張すんな。



俺はもう勇人なのか。



ちゃんと家で『勇人』になるイメージや練習はした。



俺がイメージする勇人ってぶっきらぼうだけどピュアで、皐月を大事に思ってる…。



普段もムスッてした顔だ。皐月がいるとちょっと照れてる感じ。



だからそっぽ向いてムスッてしてれば大丈夫だろう。



白田さんがカメラを俺たちに向けて構えた。



カシャ カシャ


シャッターの音がなる。



何枚か取ったところでカメラを下ろした。



「君達の想像する主人公はそんな感じなんだね。」



隣にいる早英さんの方は見ていないから、早英さんがどういう風にしていたのかは俺には分からない。


「勇人はぶっきらぼうで照れ屋。早英はおしとやかで、人見知り。

まぁ、傍目から見たらそうだ。


けど、今隣にいるのは誰だ?」



皐月こと早英さんです。


チラっと隣を見た。

すると、向こうもこちらを見て、ジーと見つめあった。



「君達は『勇人』と『皐月』だ。


この言葉の意味が分からなければ、俺が求めてるのも撮れないだろうな。」


そう言って、白田さんはパイプ椅子にドカっと座った。