「そ、そんなワケねぇだろ!!
こいつ近所に住んでて、幼なじみなだけだ。
そうじゃなきゃ、こんな奴に話しかけるかよ!
勇ちゃんって呼ばれるのだって迷惑に決まってる!!」
恥ずかしさの余り大きな声で叫んだ。
勢いに任せた勇人は、言ってから真っ青になった。
な、何を…。
皐月を見るのが恐かった。
手に汗をかいていたのが冷えていく。
カタンという音と共に皐月が立ち上がった、
「…っ、今まで…ごめんねっ、ゅ、…『山中くん』…。」
机に手をついた皐月の腕が、体が、震えていた。下唇を噛みしめ、涙をこらえているようだった。
勇人が叫んだ後から再びシーンなった教室。みんなの好奇に満ちた目が勇人達を見つめている。
バッと身を翻(ひるがえ)し、皐月は教室を出て行ってしまった。
出て行った皐月の後を悲しそうな目で追う勇人。
皐月のいない教室に無情にもチャイムが響いた。
