勇人の頑張りと運もあり、皐月が行くはずの私立に受かった。
両親は再び驚いたが息子の頑張りに感心し、勇人は今までで一番というぐらいに喜んだ。
なんせ塾の先生には無理だと言われ、両親も口に出さないが、始めた時期も時期だし無理だろうと思っている事は知っていた。
ほとんど奇跡で受かった勇人は入学式で「さっちゃん」を探した。
しかし人数が多いので全くわからない。
どうしようと思っていたところに、母親の持つ保護者に配られた入学式の案内が見えた。
そこに今年の入学者名簿が載っていたのだ。
漢字の読めない勇人は母親に頼んで、「にしみやさつき」と言う名前を探してもらった。
正直、「にしみや」という名字は、皐月に自己紹介された時に覚えていなかったのだが、
皐月の家の近くで、噂好きなオバサン達が皐月の家を見ながら、
「にしみやさん」と言っていた気がする。
皐月がここに入学する事もそのオバサン達から聞いたのだ。
「あったわよ。三組だから隣のクラスね。」
勇人の両親は、特に勇人の母親は西宮皐月と言う子を知っていた。
近くの豪邸の家の子だからという事もあるが、
勇人がさっちゃんさっちゃんとよく口にするので、
勇人の想い人であり、勇人がここに来たがる理由である事もすぐに察しがついた。
