キーンコーンカーンコーンとなるチャイムと共に集合の合図がかかったらしい。
運動場では、一カ所に向かって皆走り出す。
皐月もそれに倣(なら)った。
隣にいる友達と笑って喋りながら、小走りしている皐月を勇人が見つめていると、
皐月が一瞬こちらを向いた。
ヤバっと思った時には目があった。
そしてニコっと微笑まれて、また目線を皐月の隣にいた友達に戻したようだ。
皐月がすぐに違うところを向いてくれて良かった。
顔が熱い。
真っ赤な顔を隠すために俯いていると、一部始終を見ていた丈にまたからかわれた。
なんとでも言え。
皐月が悪い。
と、思ったが口には出さなかった。
皐月とまでは行かないが、そこそこ「良い」家庭に生まれた勇人は、
六歳になるかならないかぐらいの時に、
皐月が私立の小学校に行くと知り、
両親にそこへ行きたいと申し出た。
急な話に勇人の両親は驚いたが、真剣な勇人の目に、何も聞かず了承した。
その代わりに、塾に行くはめになったが、皐月と同じところに行くためなので頑張った。
