「あ、でも女の子と撮影だって、萩原(はぎわら)さん言ってたけど、どんな子かなぁ。
撮る時のイメージとか設定とかは聞いたんだけど、
女の子については聞いてなかったゃ。」
『萩原さんって、お前のトコ(事務所)の社長さんか。
あの人カッコイイよな~!
一回しか見たことないけどな。
あの人がモデルやったら、マジ大物になりそうなのに、もったいねぇよな。』
「そうそう!!ってそんな話してねぇだろ!」
哲哉は冷静なのかアホなのか分からないから厄介だ…。
俺は梨野國(なしやくに)。
16才の高校二年!
モデルは高校一年の時にスカウトされて、なんとなくの気持ちで始めた。
まぁ容姿を認められたみたいで嬉しかったのもあるけどな。
でも入ってみてわかったのはモデルって全然楽じゃない。
全部事務所が色々やってくれるのかと思ってたら、
マネージャーさえも付けられず、ほとんど自分でしないといけない。
ただ契約時に、お金などは一切徴収したりしないと約束されているため、交通費などを除けばお金はかからない。
交通費も一部は支給されているので一応は大丈夫だが、
現場に行く費用ギャラゃらその他を、自分で色々管理するのって難しい。
先輩たちはある程度実績を持っているので、マネージャーが付いている人が多いから羨ましい。
先輩達は俺のような新人時代を乗り切った人達なので当然と言えば当然だが…。
反対に、
新人時代の辛さに負けて辞めて行く人も多い。
ここにいると、普通に高校生活を送るとう事がどれだけ平穏で幸せかという事が良く分かるようになる。
だけど、普通に高校生活を送るだけでは得られない栄光と刺激があるのもこの世界だ。
そんな世界に魅せられ、それらを得続けるために平穏さを捨て、俺たちはここに残る。