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俺の名字が、武田じゃない頃…
まだ、西松だった頃。
俺の父親的存在の男は、本当に最低な奴だった。
仕事もしねーで、家で酒ばっかり飲んでた。酒がなくなると、キレてよく母さんを殴ってた。幸い、俺は殴られることはなかった。だからといって、優しくされたことも話しかけられることもなかった。愛情なんてものは、皆無だった。
俺という存在を無いものとして扱っていたように思う。
母さんも、ソイツのことを名前では呼ぶけど”お父さん”や”パパ”と呼んだことは一度もなかった。
物心ついた頃からそんな感じだから、アイツを父親だと認識していなかった。
同じ家に住んでいるただのオッサン。
そんな男と長い時間一緒にいたくなくて、母さんが仕事に出かけると同時に家を出て、帰ってくると同時に俺も家に帰った。
きっと、母さんは俺がアイツと一緒にいたくないことに気が付いていたんだと思う。だから、外が暗くなって家に帰ってきても何も言わなかったし昼飯も外で食えるように弁当を作ってくれていた。
それに、事あるごとに俺を抱きしめて「お母さんが、頑固なばっかりにごめんね…。」と言われた。その時の俺は、なぜ母さんが謝る必要があるのかさっぱり理解ができなかった。
そんな家庭環境に育ったおかげで、他人を思いやる気持ちとか愛情とかが欠けていたと思う。母さんの愛情は、なんとなく感じていたけど俺の愛情を育てるには足りなかったようだ。
ある時、公園に遊びに行ったら俺とよく一緒に遊んでいたヤツの一人がこう言いだした。
「咲ってヤツ、おもちゃとか新しいゲームたくさん持ってるよな。公園に持ってきてすっげー自慢するんだ。なんか、ムカつくよなー。」
俺は、咲ってヤツが誰だかわからなかった。だけど、ムカつく相手を黙らせる方法なら知っている。相手より、強ければいいんだ。俺も、そうやって過ごしてきた。おかげで、子分ばっかり増えるだけで誰も俺に逆らおうとはしなかった。
その時の俺は、その状況が物凄く心地よかった。
「だったら、俺達の方が咲ってヤツより強いことをわからせてやればいい。」
「そっかぁ。そしたら、アイツ自慢しなくなるな!」
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俺の名字が、武田じゃない頃…
まだ、西松だった頃。
俺の父親的存在の男は、本当に最低な奴だった。
仕事もしねーで、家で酒ばっかり飲んでた。酒がなくなると、キレてよく母さんを殴ってた。幸い、俺は殴られることはなかった。だからといって、優しくされたことも話しかけられることもなかった。愛情なんてものは、皆無だった。
俺という存在を無いものとして扱っていたように思う。
母さんも、ソイツのことを名前では呼ぶけど”お父さん”や”パパ”と呼んだことは一度もなかった。
物心ついた頃からそんな感じだから、アイツを父親だと認識していなかった。
同じ家に住んでいるただのオッサン。
そんな男と長い時間一緒にいたくなくて、母さんが仕事に出かけると同時に家を出て、帰ってくると同時に俺も家に帰った。
きっと、母さんは俺がアイツと一緒にいたくないことに気が付いていたんだと思う。だから、外が暗くなって家に帰ってきても何も言わなかったし昼飯も外で食えるように弁当を作ってくれていた。
それに、事あるごとに俺を抱きしめて「お母さんが、頑固なばっかりにごめんね…。」と言われた。その時の俺は、なぜ母さんが謝る必要があるのかさっぱり理解ができなかった。
そんな家庭環境に育ったおかげで、他人を思いやる気持ちとか愛情とかが欠けていたと思う。母さんの愛情は、なんとなく感じていたけど俺の愛情を育てるには足りなかったようだ。
ある時、公園に遊びに行ったら俺とよく一緒に遊んでいたヤツの一人がこう言いだした。
「咲ってヤツ、おもちゃとか新しいゲームたくさん持ってるよな。公園に持ってきてすっげー自慢するんだ。なんか、ムカつくよなー。」
俺は、咲ってヤツが誰だかわからなかった。だけど、ムカつく相手を黙らせる方法なら知っている。相手より、強ければいいんだ。俺も、そうやって過ごしてきた。おかげで、子分ばっかり増えるだけで誰も俺に逆らおうとはしなかった。
その時の俺は、その状況が物凄く心地よかった。
「だったら、俺達の方が咲ってヤツより強いことをわからせてやればいい。」
「そっかぁ。そしたら、アイツ自慢しなくなるな!」
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