狼さんの好きな人

「はぃ…」


口止めされてるってことは、モジャ男のウチ(製薬会社)関係のことかもしれない…。


そういえば、謹慎前のモジャ男って心ここにあらずって感じだった。


ドイツ語の勉強に関係してるのかな…。


まさか、モジャ男…ドイツに行かないよね…?


ここのところずっと会っていないし、話してもいない。モジャ男の状況が全くわからない。


何だか、このまま…


モジャ男が、私の手の届かないくらい遠くに行っちゃいそうで…


怖いよ。


「…ちゃん、ひよりちゃん。」


ハッとして顔を上げると、直也さんがクククッと笑い出した。


「…何ですか?人の顔見て笑うなんて、失礼ですね。」


「あぁ、ごめん。ひよりちゃん、さっき…めちゃくちゃ百面相だったから。」


「…そうですか?」


「うん。ホント、ひよりちゃんはわかりやすいよね。何考えてるかすぐにわかる。さ、キッチンに行こう。今日は、出汁の取り方を勉強して味噌汁を作ってみよう。」


「はい。」


私は、直也さんより先に歩いていたから気付かなかった。


やっぱり、チャンス到来──


そんなことを直也さんが呟いていたなんて。


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