狼さんの好きな人

「ん…」


何だか、よく寝た気がする。


ムクッと起き上がると、私を抱き締めていたモジャ男の姿はなくて、代わりに…


「お嬢、おはよ。」


「直也さん…」


直也さんが、ベッドの端に腰かけて私を見ていた。


「あの、枢は…?」


「今、夕食作ってるよ。」


「そうですか…」


モジャ男が、そばにいないと何だか寂しい…


私が起きるまで、ずっと抱き締めて欲しかったな…


「お嬢、ごめんね。」


へ…?


深々と頭を下げられてるんだけど…


「な、何ですか?頭を上げて下さいよ…」


「枢から聞いたんだ。俺、ひよこと勘違いしてお嬢に…」


「気にしないで下さい。」


「でも、凄く泣いてたって…」


「あ。泣いたのは、愛してる人を亡くした直也さんの気持ちが痛いくらい伝わったからで…。」


「そっか…。」


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