狼さんの好きな人

「知ってたよ。」


「え…?」


「ひよりと血が繋がってないってこと。二年前に知った。パスポートを取るときに戸籍の写しを見てね。」


「……そうだったんだ。」


でも、お兄ちゃんの態度はいつもと変わらなかった。


何も言わなかったし。


「俺にとってお前は大切な宝物だ。血が繋がっていようとなかろうと関係ねぇ。それは、父さんと母さんも同じだ。ひよりが一人で壁を作って疎外感を感じているだけだ。ひよりは、どうだ?俺や父さんと母さんと血が繋がらないからって嫌いになるのか?」


「ならないよ…」


「だろ?血が繋がっていなくても俺達は変わらない。家族だろ?世の中には、血が繋がってても家族と呼べない家庭だってあるんだから…」


「うん…」


「少しは、楽になったか?」


「うん!!」


「そうか。良かった。」


お兄ちゃんは、にっこり笑いながらそう言うと私の頭を撫でてくれた。


.