屋上へと伸びる階段。

その最上階に、戌井がいる…。



緊張が走る。

汗ばんだ手を、何度もズボンの裾でふいた。


迷いはある。

でも――…、いつまでも、こうしてはいられない。



ずっと。

桃井を想ってはいられないんだ…。





「じゃ…」


「うん、フミ君、がんばって!」


「フミちゃん…」




僕は踏み出した。

一段一段、時々、立ち止まりながらも、また踏み出す。


脚にのしかかる妙な重量感。

ずるずると、手すりにもたれかかりながら、僕は何度も肩で息をした。


ぞくぞくと、足の指先から走る電流のような痺れが体中を駆け巡る。