「話題をそらさない!」 ピシャリと、みっちゃんは言い放った。 フミちゃんという名前は、橘だけが決まってそう僕を呼んだ。 本来の名前は、史高吉野。 名前と名字が入れ替わったようなものだから、誰も僕の事を苗字で呼ばない。 吉野君、あるいは、吉野さん。 いや、それ、名前だから。 何度そう説明しても、誰も僕の名前と名字の区別がつかない。 というよりも、「吉野」という名前は、頭の片隅にも残らないらしい。 史高という名字の方が、名前よりも名前らしいのだ。