はっきりいって、桃井が転校してきてから、今日に至るまで、平穏無事に過ごした日々があっただろうか。


ない。

絶対にない。


初めて会った時からだったが、桃井には驚かされてばかりだった。

その容姿や言動に騙されたのか、付き合う過程に至るまで、桃井のペースにはまったままだ。


ふいに抱き締められたり。

頬を撫でられたり。

時には、手をつないで登下校もした。



恥ずかしいとは思った。

だけど――…嫌だとか、気持ち悪いとか、そういうものは不思議となかった。


勉強を教えてもらうという条件は、僕を縛り付けるものだとばかり思っていたが、そうではなかった。