「ねぇ…聞いてる?」 「え…あぁ…うん」 声をかけられて、若干、僕の時間は止まっていたらしく。 我に返った時、戌井ユキは、僕の顔の前で手をふっていた。 「史高吉野君だっけね…」 「戌井…ユキだっけな」 僕は机の中に入れっぱなしだった手を抜いた。 ――…名前…、知ってんだ。 桃井から、聞いたとか? 戌井ユキは、周囲を見まわし 「あのさ…ここじゃなんだから…、放課後、話さない?」 「何のためにだよ」 「私と、史高君…、それに…」 「桃井か…?」 僕の問いに、戌井ユキはこくりと頷いた。