「あーあぁ…あぁ…」 どうしようもないジレンマに、どうしようもない声が保健室に響いた。 その時だ。 ――…コンコンというドアをノックする音が聞こえた。 保険医か? 僕はいそいそと布団の中に身体を潜り込ませた。 何とか、都合のいい風邪を演じ切れば…教室に戻らなくてすむかもしれない。 桃井と、顔を合わせずにすむかもしれない…。 息を殺して、僕は眠ったふりをする。 「誰も…、いないんですか?」 む…? 瞑った瞼が痙攣した。 この声は…まさか…。