「フミちゃんらしくねぇな」


「は…?」


「だからさ、らしくねぇって、言ってんの」


僕が身体を起こすと、目の前には、いつになく真剣な橘の表情があった。

豆電球しかつけてない薄暗がりの中、橘の怒ったような顔。

こういう風に、橘が僕に対して怒りをあらわにするのは珍しい。

橘は、いつもヘラヘラしていて、傲慢で、自由で…。



「フミちゃん…、俺がみっちゃんと付き合う前の事、覚えてる?」


「…何だよ、それ」


「覚えてる?」


「あー…、まぁ」


確か、橘は悩んでた。

みっちゃんに気持ちを伝えるかどうかって時、橘ほどのイケメンでも、悩む時あるんだなぁって、その時は、つくづく感心したっけな。



「あん時、俺の背中を押してくれたのは、フミちゃんだろ?それなのに…尻ごみすんのか?」