橘のへらっとした顔を見ていると、尚更、苛々がつのる。
でも、心の奥底ではわかっていた。
この苛々が――、橘へ向けられたものじゃないんだって事を。
「僕は…、落ち込んでなんかない!」
「わーかったって!とにかく、フミちゃん、息をして!」
「僕は…、僕は…!……」
1人でそう叫んでいて、はたはたと、両目から冷たい雫が落ちてくるのに気がついた。
「フミちゃん…」
「フミ君…」
それが涙なんだって理解できた時、僕は橘とみっちゃんによって抱きしめられていた。
がっしりとした橘の腕と――、やわらかく、ふわふわとしたみっちゃんの腕の感触。
