桃井の腕の中にすっぽりと埋まっていた。
「ちょっ…いいから、離せよ…」
「んー、どうしよっかな」
桃井の顔が、僕の頭に乗せられる。
桃井が何か話すたびに、桃井の低く心地いい声が、頭の中で振動する。
「史高は、ぬくいね」
「橘と、同じことを…言ってどうする」
じたばたともがいていた僕の抵抗はなくなった。
身長差があるから。
体重差があるから。
契約途中だから。
そんな理由を頭にたくさん並べて。
僕は、桃井の好きなようにさせていた。
抵抗しようと思えば、そうできたけど、あえてしなかった。
桃井に何を言っても無駄だから。
桃井の好きな子が、もしかして見ているかもしれないから。
桃井の――ために。
