「史高」


桃井は、僕の事をそう呼んでくる。


人懐っこい笑顔で、僕の隣にはいつも桃井がいた。


あの日から――、そう、契約が成立したあの日から、ずっと。



といっても、まだ一瞬間しか経っていないが…。

もう、何十年も年をとったような感じがする。


勿論、過度なスキンシップもたびたびする。


桃井は嫌がる僕の腰に手を回したり、抱きしめたり。


女子はそのたびに悲鳴を上げ、男子は指を加えて、「羨ましい奴め」と呟いていた。



桃井ほどの容姿なら、たぶん、何をしても許されるんだろう…。



橘やみっちゃんには、付き合う本当の理由は話していない。

話そうとはしたが、桃井はそれを止めた。




いつ、どんな状況で、「嘘」がばれてしまえば、桃井が本当に好きな「その子」が振り向かなくなるからだと言って…。