――って、今、唇と唇が、重ならなかったか? 誰と誰のって。 僕と、桃井の、唇が――……。 重なりませんでしたか!? 「…っ、っ…桃井!!!」 怒りと気恥ずかしさで、僕が桃井の名前を叫んだ時には、時すでに遅く…、桃井はバスの後部座席の窓から、楽しげに手を振っていた。 あの…野郎…! 唇を、ごしごしと手で拭き取りながら、僕はその場にうずくまった。