「誤解はとけたみたいね」


戌井の晴れやかな笑顔がそこにあった。



「屋上に呼んだのは、あなたが――…史高君が、翠を避けてるみたいだったから、私が提案したの。事情は全部知ってる。でも、私は別に、気にしてなんかないわ。むしろ、大歓迎なんだからね」


「それとこれとは、別に…今度からきちんと、学校には来いよ」


「わかってるってば。もう…」



戌井の髪の毛を桃井はくしゃりと撫でた。

その光景に、僕は見惚れていた。


そうか――…そうだったのか。


桃井に感じた雰囲気。

透明さと聡明さ、時間が止まってしまうかのような美しさ。


戌井もそれと似たような感じだった。

儚さと、繊細さ、そして、息をのむ瞬間が永遠だと思えるような。


2人のかもし出す浮世離れした雰囲気が、どうして僕をこんなにも虜にしてしまうのか、ようやくわかったような気がした。