「じゃ…、好きな子って、なんでわざわざ嘘ついたんだ?正直に言えばいいじゃないか!嘘つく理由、それこそ謎じゃないか…」



そうだ。

なんで、桃井はどうして僕にそんな「嘘」をついたんだ?

正直に、妹の戌井が心配だからって――…そう言えばいいんじゃなかったのか?




「気を引きたかったんだ…、嘘をついてでも――…史高と一緒にいたかった。だって、オレが史高を好きだと言ってたら、史高は、オレと付き合わなかっただろ?」



「そ…そんな事…」


「ない…、とは言い切れないだろ?オレが史高に想いを寄せていても、史高は友達としてしか、オレを見ない…。嘘でもよかったんだ。オレの傍に――…いてくれるんなら、嘘をついても、構わないって思ったんだ…。だから、ごめん…騙して、ごめん」



僕はへたりとその場に座り込んでしまった。

腰が抜けたという状態に近い。

拍子ぬけというか、安心した――…というか。



桃井が、僕の事を好きだという事実もそうだけど、戌井が桃井の「妹」だった、という事実にも安堵したのだ。



僕は――…桃井が好きだ。


そして、桃井も



「史高…、キミが好きなんだ…。だから、嘘をついた。ごめん…本当に」