横では、橘とみっちゃんが、まだ言い争いをしていた。 喧嘩というよりも、いちゃついているようにしか見えないのだが、本人達に注がれる羨望の眼差しは、2人の世界には見えないらしい。 時折、橘が僕の腕を引っ張って助けを求めてはいたが、僕はうるさく、その手をはたいた。 あぁ、もうすぐ冬が終わるんだぁとか。 高校2年といったら、修学旅行だなぁとか。 タイ焼きも、今が旬だなぁとか。 転校生や、橘とは一切関係のない事を、ぼんやりと考えていた。 そんな矢先に――、ひやりと、冷たい風が頬をよぎった。